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【実体験エピソード】もしかして?「不妊かも」と思ったときに最初にすること
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2022年4月より、これまで自費診療であった「人工授精」や「体外受精」が保険適用になったことで、「不妊治療」に対する注目が高まっています。実際に、近年は不妊治療で子どもを授かる方も増えており、興味を持っている方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、不妊症とはどのようなものなのかを詳しく解説。あわせて、「もしかして不妊かも?」と感じたときに行う検査や治療の方法などをご紹介します。
- コラムサマリ
-この記事のまとめ
1.「不妊治療」は特別なことではない
2.どこからが不妊?
3.不妊の原因となりうるもの
4.「不妊かも」と思ったらどうすればいい?
4-1.まずは検査をしましょう
4-2.実際の不妊治療にはさまざまな方法があります
4-3.不妊治療にかかる費用はどれくらい?
4-4.不妊を防ぐためにできること
5.保険適用になった不妊治療
5-1.社会全体に支えられる不妊治療の広がり
6.「不妊かも」と思ったらまずは診察を
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「不妊治療」は特別なことではない
不妊に悩んだり、実際に不妊治療を行ったりする夫婦が増加傾向にある昨今。不妊治療はけっして特別なことではなくなってきています。
厚生労働省の発表(2015年の調査※)によると、不妊を心配したことがある夫婦は35%、つまり夫婦全体の約2.9組に1組が不妊を心配したことがあるという結果に。さらにステップを踏み、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は18.2%、約5.5組に1組の割合にのぼります。晩婚化によって妊娠を考える年齢が上昇していることもあり、不妊に悩んだり治療を行っている夫婦の数は今後さらに増えていくと予想されています。
「不妊」の疑いは、男女ともに非常に大きな不安となるはずです。実際に不妊治療を始める場合、とくに女性側には体力的かつ精神的な負担が生じるもの。今後のライフプランを考えるためにも、少しでも心配になった場合はいち早く専門機関を受診してみましょう。
※https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30l.pdfどこからが不妊?
不妊=不妊治療をしても妊娠しないこと、と思われている方も多いのではないでしょうか。しかし実は、不妊とは「妊娠を望んでいる男女が避妊をしないで性交しているにもかかわらず、一定期間妊娠しないこと」を指します。日本産婦人科学会は、1年間の妊娠が認められない場合を不妊だと定義しています。
ただしこれは、1年間は不妊治療をしなくてよいという話ではありません。男女ともに加齢が不妊に影響することを考えると、治療を先送りすることでさらに妊娠しづらくなるリスクもあります。年齢を考慮した結果、一定期間を待たずすぐに治療をはじめるケースも多いです。
不妊の原因となりうるもの
現代のように不妊の検査や治療が一般的でなかったころは、不妊の原因は女性側にあると考えられていました。しかし、医療技術が進歩したことで、さまざまな不妊の原因が明らかに。具体的に、不妊の原因には以下のようなものが挙げられます。なお、検査をしても原因が特定できない場合もあります。
女性側の不妊の原因
- ホルモンバランスが崩れることで正常な排卵が起きていない場合
- 卵子が通る卵管に詰まりが生じている場合
- 子宮筋腫や過去の手術などによって子宮の働きが十分でない場合など
男性側の不妊の原因
- 精子の数が少なかったり、精子が活発に運動できていなかったりする場合
- 精子の通り道である精管に詰まりが生じている場合
- 性行為において射精ができない場合など
その他
- 加齢
- 妊娠·出産に対する不安感、不妊治療に伴う検査や投薬のストレス
不妊に対する不安やストレスは、妊娠できない期間が重なるほど大きくなりがちですよね。気になることがあれば、まずは専門の医療機関で検査をしてみましょう。
「不妊かも」と思ったらどうすればいい?
不妊はけっして他人事ではなく、子どもを持ちたいと考えるカップルであれば誰しもが不妊症になる可能性があります。そのタイミングがきたときに慌てないよう、妊娠·出産に対する不安があったり、不妊治療を視野に入れたライフプランを考えたりする方は以下のようなことをはじめてみましょう。
まずは検査をしましょう
女性側の検査では、子宮や卵管に異常がないか調べる検査、女性ホルモンの分泌や甲状腺の機能を調べる検査、性交後に行う検査などがあります。また男性側は精子の数や運動率を調べる検査をします。検査で不妊の原因が特定できた場合は、それぞれの原因に応じた治療がスタートします。原因が特定できなかった場合は、排卵と受精を補助する治療を順に行います。
実際の不妊治療にはさまざまな方法があります
不妊治療にはさまざまな方法があり、カップル一組一組にあわせて最適なものが選択されます。具体的には、妊娠しやすい日に合わせて性交を行う「タイミング法」、内服薬や注射によって排卵を促す「排卵誘発法」、精子を子宮内に注入する「人工授精」、卵巣から取り出した卵子を体外で精子と受精させたのちに子宮に戻す「体外受精」などです。
不妊治療にかかる費用はどれくらい?
初診と検査には数千円~2万円程度(検査の方法による)、タイミング法や排卵誘発法、人工授精などの一般不妊治療は1回につき数万円程度、体外受精や顕微授精などの高度不妊治療は1回につき10~70万円程度かかるとされています。しかし、不妊治療を行う期間や検査·治療の方法に個人差があるためかかる費用にも大きな差があるのが現状です。
実際に不妊治療を行うときに慌てないようにするためにも、日頃から妊娠·出産に向けた貯蓄などをして備えておきましょう。不妊を防ぐためにできること
不妊を防ぐために、妊娠する力を高める生活習慣を心がけましょう。具体的には規則正しい生活、禁煙、下半身を締め付けず血流良く保つ生活、基礎代謝をアップさせる適度な運動、ストレスをためないことなどが大切です。また、肥満や痩せすぎといった体重異常が不妊の原因となることも。適切な体重を保つための食生活管理や運動なども重要です。
<実体験エピソード:神奈川県在住のMさん(30代·航空会社勤務)>
タイミング法、人工授精、体外受精を経て、昨年の冬に双子の男の子を出産しました。妊娠するまでに3回病院を変え、自分に合う病院や医師を見つけました。不妊外来の病院を選ぶ際にポイントにしたのは①治療実績を公開している、②生殖専門医がいる、③通院のしやすさの3点。なかでも治療実績を重視しました。長い期間がかかるからこそ、医師との相性もチェックすることをおすすめします。
保険適用になった不妊治療
これまで、不妊治療のいくつかの治療法は「自由診療(=保険適用外の診療)」であり、費用が高額になってしまう問題がありました。しかし、2022年4月からはタイミング法や人工授精、体外受精·顕微授精など多くの治療法が保険適用に。高額な不妊治療も負担額が軽減され、より不妊治療が受けやすくなりました。
さらに、治療にかかった費用が一定額を超えた場合に1ヶ月の自己負担額を抑えられる「高額療養費制度」の対象にもなりました。所得に応じて、1ヶ月の自己負担金額の上限を超えた分について払い戻しを受けられます。
また、保険適用されたことによって、不妊治療が広く社会一般へ認知されることが期待されます。理解が進むことによって、不妊治療を行っている夫婦への周囲の理解や協力が増えることでしょう。社会全体に支えられる不妊治療の広がり
現在、不妊治療に対する支援を行っている企業は全体の3割ほど(2015年時点)とそこまで多くはありません。仕事と不妊治療を両立するのが難しいと考えている夫婦も多く、なかには仕事と不妊治療のどちらかを諦めたり、雇用形態を変えたりする方も……。
<実体験エピソード:東京都在住のAさん(30代·税理士)>
妊活をはじめたときは20代だったこともあり、すんなり授かれると思っていました。しかし、いざ自己タイミング法でトライしてみても機会に恵まれず……。1年経過したタイミングで、病院を受診し不妊治療をはじめました。多いときには週3~5回も通院しなければならず、悩んだ結果別の税理士事務所に転職することに。元の職場でキャリアを積みたかったという想いもありますが、現職場は不妊治療にも協力的。この春、無事に第一子を授かることができました。結果的にはこの決断をして良かったと思っています。
そんな声を受けて、近年は不妊治療にかかる環境整備に取り組む企業への助成金なども導入されるなど、国をあげての対策がなされています。だれもが当たり前に不妊治療を受けられ、仕事やプライベートを諦めなくていい未来に向けて――。社会も人々の意識も変化しているのです。「不妊かも」と思ったらまずは診察を
不妊治療は子どもを望む夫婦だけの問題ではなく、少子高齢化が進む日本が抱えている大きな問題です。社会全体で不妊治療に取り組む夫婦を支えるためには、今回の「保険適用」が大きな一歩になることでしょう。このムーブを受けて、今後不妊治療がより一般的な治療として広まっていくことが期待されますね。
この記事の執筆協力
- 執筆者名
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山本 杏奈
- 執筆者プロフィール
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金融機関勤務を経て、フリーライター/編集者に転身。現在は企業パンフレットや商業誌の執筆・編集、採用ページのブランディング、ウェブ媒体のディレクションなど、幅広く担当している。
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